【読書】統計で見る現代日本|統計学が日本を救う(西内啓)
この春から大学院で経営学を学ぶことになりまして。
もうちょっと、苦手な数字分野に対しての考え方とか養わないとな、と思って読んだ1冊。新書なのであまり厚くもなく、またわかりやすい解説で一気に読めます。
統計学が日本を救う - 少子高齢化、貧困、経済成長 (中公新書ラクレ)
- 作者: 西内啓
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2016/11/08
- メディア: 新書
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コンテンツとしては以下の通り。
1.統計学が導く少子高齢化の事実
2.貧困との戦いとしての社会保障論
3.医療を受ける患者とコストを負担する私たち
4.経済成長を実現するために今できること
この本のタイトルで言われている通り、「日本を救う」というのは、「感情論だけでなくて実際の数字から見える現実を見つめ直そうぜ」 というものでして、現状のデータから読み解く現時点で立てられる対策、考えられる是正などが書かれています。
1.統計学が導く少子高齢化の事実
以前「2100年、人口3分の1の日本」でも紹介した少子高齢化、1970年代には「子供減らせ」という政府からの見解が出て、ちょうど人生ボーナス時期の団塊ジュニアの出産の可能性が高かった1990年代、実際に少子化が問題になり始めたときの政府の「エンジェルプラン」が大幅に稼働しないまま2010年代に突入し、「保育園落ちた、日本死ね」が発生するという現状の背景まで、この50年の推移を数字とその政治背景を見るだけでも政策としては機を逃した、としか言いようがないのが実情、ということがよくわかりました。
この部分で、日本という国の構造と政策を担う人たちの危機感のなさがちょっと伺えるというか。
2.貧困との戦いとしての社会保障論
「犯罪者を収容して懲役をさせるコストよりも、生活保護で生活されたほうがコストが安い」という事実。生活保護を発生させない、幼い頃からの教育や援助などが将来への対策になるという内容です。
貧困のスパイラルはやっぱり重症で、それがわかっているのであれば社会で何かしらの対策は立てられるのではと思っています。西原理恵子さんではないけれども「貧乏は治る病気になった」時代になっているはず。
3.医療を受ける患者とコストを負担する私たち
びびったのが「高齢者の1年生存年数を延ばすのに薬剤の公的負担として4,000万円〜7,000万円使っていることになる」(結構端折って書いてますので、気になる方は本読んでください)という部分。危険な思想になりそうなので、この本の中でもこの件についての是非は言及されていませんが、データを切り取って考えるとそういう部分も見えてきて、いろいろかんがえてしまう。
夕張市の医療崩壊で高齢者の病気が少なくなったというTEDxの例のアレ思い出しました。
4.経済成長を実現するために今できること
「人口が減少すると経済が発展しない」思ってました思ってました。
ですがこの本の中では、「健康寿命高齢化に伴う高齢者の雇用・リタイア前の雇用延長」「現在働きに出ていない層の経済的参加」することでまだ日本のGDPは挙げられる可能性がある、これだけの人手不足なら潜在労働力を市場にリリースすべき、という内容です。
GDPが上る必要あるの?って思ってました思ってました。
現状の経済力であったり生活水準を守るのにはやっぱり必要で、現状のGDP(とはいえ指針の一つではありますが)を維持することで、国民の健康と安全が守られるっていう相乗効果。先述した「貧困」の部分でも触れられていましたが、国民が健康であることで生産性が伸び、犯罪を起こりにくくなる、という点でもGDPの維持が必要なんだと、この本で学びました。これだけ豊かに生活していると、ネガティブな想像力も欠けてきますね・・・
「統計学」とつくと膨大な数字を想像してちょっと途方に暮れそうですが、こうして解説をしてもらえるといろいろな見方ができて面白い、ということをこの1冊から教えてもらいました。
いろいろとほかのも読んでみよう。