【読書】欧州の事情と重なる日本の事情|「新・資本論」トマ・ピケティ
落ちこぼれMBA生です。どーも。
先日、教科書ガイド的に佐藤優氏の資本論の本を読んだばかりなので、他の切り口の資本論なども読みたいと思って手にしたのがこちら。トマ・ピケティ先生の新・資本論。
結論から言うと、マルクス・エンゲルスの資本論はあんまり関係なくて、もともとピケティ先生がフランスの日刊紙で連載していた内容を1冊にまとめた本だとのこと。フランスで起こっている社会問題、選挙や政治の動き、EUの動きやフランスから見たアメリカのオバマ政権であったり、日本のGDPと借金であったり、あとがきにある通り日経新聞の「経済教室」の小粒版、と言うのも納得です。1センテンスが4~6ページなので簡単に読みきれます。
日本のメディアだけだと伝わってこない、アイルランドからポーランドへ、そしてまた税制の安い国へと移動していくだけで、本拠地として税金を納めていたグローバル企業が移動するたびに国が大騒ぎになったりIMFが介入したりすることになるタックスヘイブンの真実や、相続税などにおけるPACSの限界、富裕層が高齢者に移行していく様や週35時間労働における弊害など、さらっと流し読みしただけですが、相続問題や税制、教育制度について(フランスの学校が水曜日休みって知らなかった!)、これからの日本でも同様に起こってくるであろう問題を先に、もしくは同時に進行させているようにも見えました。
フランスから見たオバマ政権での、保険制度導入への苦労やフランスと言う先進国では発生していないと思われていた奴隷制は、未だフランス国海外県で慣習として残っているなど、知らない視点での情報が見られることで、改めて自分があまりにも無知な上に理解もせずニュースを流し読みしていたことを感じて反省。
特に印象的だったのは、ギリシャ破綻の件では時の首相が「ドイツ人の遺伝子にナチズムがないように、ギリシャ人の遺伝子にも怠け癖はない」という発言があり、ギリシャは国の一部が常に他国に所有されており自国か所有するより多く、ギリシャが消費や貯蓄に回せる国民所得は他国に払いこむ利子と配当を差し引くと、国内総生産よりも低い状態が続いているという事実。そりゃEUに「お前ら保証しろ」って言うわ・・・。
また、一番印象に残った部分がP363 L8
基本収益率(r)と成長率(g)はイコールではない。両者の関係性はr>gと表すことができる。この不等式から、過去に蓄積された富が次第に桁外れの規模に達し、自動的に集中していくことが読み取れる。この傾向は数十年前から予兆があった。アメリカはもちろん、ヨーロッパでも、さらには日本でも、主に人口要因に起因する成長率の低下により、所得に比して富の重さがかつてなく高まっているのである。
ここで注意して欲しいのは、資本収益率が成長率と同水準まで下がるべき理由は何もないことである。
先日読んだ「今生きる資本論」の内容を思い出してぞっとしました。
んで、これ読んだ時に「全部落としたけどMBAでファイナンス勉強しておいてよかったな」って思いました。GDP4%分の減税、と言う数字のカラクリ出会ったり、タックスヘイブン出会ったりVATやCGSってものがなんとなくわかってるだけでも理解の深さが3mmくらい違う。落ちこぼれだけど。
最後に、ISILについても言及されていたので、出口治明さんから聞いた言葉を。
「貧しいと原理主義に回帰するんです。」
富の分配ではなく、共有されていたはずの富を取り戻す。そういう思想の人たちと分かり合えるのか、という大きな問いがある気がしています。